
ドクターズノート
インフルエンザ対策の新しい選択肢 抗インフルエンザ薬の予防投与とは?
◆ はじめに
毎年冬になると必ず話題にのぼる「インフルエンザ」。
コロナ禍では多くの方が徹底した感染対策を行っていたため、ここ数年は大きな流行が目立ちませんでした。しかし今年は、コロナによる行動制限がほぼなくなって迎える初めての冬であり、インフルエンザの流行は例年より早いと予測されています。
インフルエンザシーズンは、家族の一人が発症すると「次は自分かも…」と不安になるものです。特に受験を控えたお子さん、大事な商談を控えた社会人、介護が必要な高齢のご家族と同居している場合などは、
「絶対にうつるわけにはいかない」
という状況が誰にでもあります。
ワクチンや手洗いなど基本的な予防法はよく知られていますが、意外と広まっていないのが 抗インフルエンザ薬(タミフル)を使った“予防投与” です。
この記事では、一般的にはあまり語られない タミフル予防投与の本当のメリット・対象者・注意点 を医師の視点から分かりやすく解説します。
1. インフルエンザの“家庭内感染”が最も危ない理由
インフルエンザの感染原因で最も多いのは 「家庭内感染」 です。
その理由はシンプルで、
- 長時間、同じ空間で過ごす
- 食事・入浴・就寝などマスクを外す場面が多い
- ドアノブやダイニング、トイレなどの接触が共通
であるためです。
実際、問診でも
「子どもが学校でうつされて → 家族全員へ広がった」
というケースが非常に多く見られます。
家庭内感染を防ぐことは、季節流行の被害を最小限に抑えるための最重要ポイントと言えます。
2. 予防投与とは?タミフルの仕組み
タミフル(一般名:オセルタミビル)には
- 治療薬としての効果
- 発症を防ぐ予防薬としての効果
の2つがあります。
タミフルは体内でウイルスが増えるのを抑え、
インフルエンザの発症そのものを防いだり、症状を軽く済ませる 作用があります。
🔸 予防投与の基本
「1日1回 × 7〜10日」の内服
家庭内でインフルエンザ発症者が出た場合、周囲の家族が予防的に服用します。
3. どんな人が予防投与すべき?
以下に当てはまる方は、予防投与のメリットが特に大きいと感じます。
◎ 受験生(中学・高校・大学)
受験直前にインフルエンザで本番を欠席するリスクは大きく、
受験期には実際によく使用されています。
◎ 高齢者(65歳以上)
肺炎や重症化リスクが高い。
◎ 基礎疾患のある方
- 糖尿病
- 心疾患
- 喘息
- 免疫力の低下している方
◎ 妊婦さん(※医師判断で慎重に対応)
◎ 家族内で毎年インフルが広がる家庭
4. 効果は?本当に予防できる?
複数の研究で、
発症予防効果は約70〜90%
と報告されています。
つまり、
- 「家族がインフルになったらほぼ感染する」
→ から - 「ほとんど防げる」
に状況を大きく変えられるということです。
🔸 タイミングが重要
家族が発症してから2日以内の内服開始が最も効果的。
「うつるかも…」と思ったら、早めの相談が安心です。
家庭内感染の多さを考えると、タミフルの予防投与は非常に強力な選択肢です。
5. 副作用と注意点
主な副作用は以下の通りです:
- 軽い吐き気
- 腹痛
- 頭痛
まれに、
- 異常行動(特に10代男性)
が報告されていますが、これは主に治療目的の投与データで、予防投与では極めて稀とされています。
※ 夜間に一人にしないなど基本的な注意は引き続き必要です。
6. 費用
タミフル予防投与は 保険適用外(自費診療) です。
一般的には
- 診察料
- 薬剤費(7〜10日分)
が必要です。
当院では、診察料と処方箋料を合わせて 3,600円 となります。
(予防薬として使用できる薬剤はタミフル以外に、イナビル吸入薬、ゾフルーザがありそれぞれ薬局でのお支払いになります。)
受験・仕事・高齢者介護など、感染の影響が大きい場合には十分に価値のある選択肢です。
7. 受験生・高齢者のいる家庭が“知っておくべきこと”
- 家族内感染は非常に高い

- 発症後では予防効果が不十分な場合がある
- 予防投与は“家族が感染した直後”が最も効果的
- ワクチンとの併用は問題なし
- いざという時のために、事前に相談しておくと安心
この知識があるだけで、冬の安心感は大きく変わります。
8. まとめ
タミフル等の抗インフルエンザ薬の予防投与はまだ一般にあまり知られていませんが、
医療現場では「使うべき場面が多い」有効な選択肢 です。
特に
- 受験生
- 高齢者
- 基礎疾患のある方
がいるご家庭では、一度検討してみる価値があります。
我が家でも先日子どもが感染しましたが、
予防投与のおかげで私は感染せずに済み、休む事無く診療する事ができ改めてその効果を実感しました。
冬場は体調を崩しやすい季節です。
「もしもの時の選択肢」として、こうした予防法があることを知っておいていただければと思います。
◆ クリニックからのご案内
当院でも、インフルエンザの予防投与に関するご相談を随時受け付けています。
- ご相談のみでもOK
- 自費診療での予防投与に対応
- ワクチン接種との併用も可能
「受験が近い」「家族がインフルになった」など、必要なタイミングで迅速に対応いたします。
お気軽にお問い合わせください。








