ドクターズノート

便潜血検査「陰性だから大丈夫」は危険な誤解です

便潜血検査が「陰性だから大丈夫」は危険な誤解です

便潜血検査だけで、早期の大腸がんは見つかりません

毎年の健診で「便潜血検査(FOB検査)」を受けて、結果が「陰性」だったとき、「今年も大腸がんはない」と安心していませんか?
実はこの検査、見逃しが非常に多く、特に"早期"の大腸がんに対しては、見つけられない確率のほうが高いのです。

1便潜血検査とはどんな検査?

便潜血検査は、便の中に微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。大腸がんやポリープが出血することで陽性になります。痛みなく、自宅で採便できる手軽な検査で、多くの自治体健診でも取り入れられています。

ただし、この検査が得意なのは「出血しているがん」を見つけること。逆に言えば、出血していないがんは見つけられません。

2早期がんの見逃し率は最大70%

大腸がんには進行度(ステージ)があります。問題は、治療しやすい「早期がん」ほど出血が少なく、便潜血検査では見つかりにくいという点です。

進行がん(StageⅡ〜Ⅳ)の感度
80〜95%
出血しやすいため検出しやすい
早期がん(StageⅠ)の感度
50〜60%
約半数が見逃される
粘膜内がん(Stage0)の感度
30〜50%
最大70%が見逃される
つまり、便潜血が「陰性」でも…
早期(Stage 0)の大腸がんがあった場合、検査で見逃される確率は最大70%。
陰性 = がんがない、ではありません。

3陰性でも1000人に1〜2人はがんがある

「陰性判定を受けた人のうち、次の検診までにがんが見つかる人」のことを「中間期がん」と呼びます。国内外の研究では、便潜血陰性後の2年間で、1,000人あたり約1〜2人に大腸がんが発見されることが報告されています。

便潜血検査(陰性)の場合
0.1〜0.2%
陰性でも1,000人中1〜2人にがんが潜む。特に右側大腸・女性は見逃されやすい。
大腸内視鏡で見つかるがんのうち
80%以上
がStage 0〜Ⅰの早期段階。内視鏡はそのまま切除(治療)も可能。

大腸がんついて詳しく見る

4手術になったら、費用はどれくらい?

早期発見できれば内視鏡でポリープや粘膜内がんをその場で切除できます。しかし、発見が遅れてしまうと、腹腔鏡下手術が必要になり、費用も入院の負担も大きくなります。

腹腔鏡下結腸切除術(入院10〜14日)の費用目安

手術料(腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術) 約 59万円
麻酔・入院基本料・検査・薬剤など 約 71〜91万円
医療費総額(10割負担) 約 130〜150万円
高額療養費制度適用後の実負担(一般所得) 月 約9〜10万円

高額療養費制度のおかげで窓口での医療費負担は抑えられます。ただし、これに加えて入院中の食事代(約1.6万円)・差額ベッド代・日用品費・仕事を休むことによる収入減なども考えると、患者さんへの実質的な負担はより大きくなります。

早期(Stage 0〜Ⅰ)なら内視鏡だけで治療が完結します。
日帰り〜短期入院で済み、身体的・経済的な負担は手術と比べて大幅に少なくなります。

5大腸内視鏡検査なら何が違う?

大腸内視鏡(大腸カメラ)はカメラで大腸の内側を直接観察する検査です。便潜血検査とは根本的に異なり、出血していない早期がんやポリープも直接見つけることができます。

大腸内視鏡の感度
95%以上
大腸がんの見逃しがほとんどない
発見がんのうち早期(Stage 0〜Ⅰ)
80%以上
内視鏡その場での切除も可能

日本の大規模スクリーニング研究(秋田県、2025年)では、無症状の方4,495人に大腸内視鏡検査を実施したところ、0.6%(27人)に大腸がんが発見されました。そのほとんどが早期段階でした。

大腸がんは、早期発見で治せるがんです
便潜血検査が毎年「陰性」であっても、定期的な大腸内視鏡検査を受けることで、
見逃しリスクを大幅に減らすことができます。

大腸カメラついて詳しく見る


特に40歳を過ぎた方、大腸がんの家族歴がある方、
便通の変化が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献:Niedermaier T, et al. Am J Gastroenterol. 2020 / Kawamura T, et al. J Anus Rectum Colon. 2021 / Kudo SE, et al. BMJ Open Gastroenterol. 2025 / 住友病院 入院医療費概算 2024 / 厚生労働省 診療報酬点数表(令和6年度)

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