
ドクターズノート
その指の痛み、更年期のサインかもしれません
指の関節の腫れや痛みを「年のせい」で済ませていませんか?――それは女性ホルモンの減少のサインかもしれません
当院は消化器内科のクリニックですが、地域のかかりつけ医として、お腹の症状以外のご相談を受けることも少なくありません。その中でよく耳にするのが「最近、指の関節がこわばる」「指の第一関節が腫れて痛い」というお話です。多くの方は「年齢のせい」「指の使いすぎ」と思い込んでいますが、実はこれ、女性ホルモンの減少が関わっている可能性がある症状なのです。
更年期症状だけでなく、手指のこわばり(ヘバーデン結節)にも、女性ホルモンの減少と「エクオール」が関わっています
1女性ホルモンの減少による症状チェックリスト
以下の項目に、いくつ当てはまるか確認してみてください。
- のぼせ・ほてり(ホットフラッシュ)
- 寝つきが悪い・夜中に目が覚める
- 気分の落ち込みやイライラ
- 肩こり・首のこり
- 手指の関節の腫れ・こわばり(ヘバーデン結節など)
- 肌の乾燥・かゆみ
- 物忘れ・集中力の低下
- 月経周期の乱れ(閉経前の方)
複数当てはまる方は、女性ホルモンの減少が関わっている可能性があります。一つひとつは見過ごされがちな症状ですが、まとめて見ると更年期のサインとして捉えられることがあります。

2見過ごされがちな「指のこわばり」は、ヘバーデン結節かもしれません
実際に当院でも、健診や別の症状でいらっしゃった患者様から「最近、指がこわばる」「朝、指が動かしにくい」というお話をうかがうことがあります。多くの場合、本来は手外科や整形外科のご相談になりますが、更年期世代の女性によくみられる症状の一つとして、知っておいていただきたい内容です。
手指の第一関節(指先に近い関節)が腫れて痛む、変形してくる――これは「ヘバーデン結節」という関節の変化で、40代以降の女性に多くみられます。長らく「使いすぎ」や「老化」によるものと考えられてきましたが、近年は、関節を包む滑膜という組織の炎症を抑える働きを担っているエストロゲンが減少することで、滑膜が腫れやすくなるのではないかと考えられるようになっています。

3カギを握るのは大豆イソフラボンと「エクオール」
では、女性ホルモンの減少にどう向き合えばよいのでしょうか。ここで近年注目されているのが、大豆由来の成分「エクオール」です。大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つことから、更年期世代の健康維持に役立つ食品として知られています。ただし、イソフラボンそのものがそのまま体に作用するわけではありません。大豆イソフラボンが腸内細菌によって変換されることで生まれる「エクオール」という物質が、実際にエストロゲンに似たはたらきをすると考えられています。
エクオールを作れる日本人女性
2人に1人
(約50%)
大豆食の習慣が少ない国の産生率
20〜30%
程度
体内にとどまる期間
1〜2日
で排出
つまり、大豆製品を熱心に摂っていても、腸内細菌の状態によってはエクオールをつくれず、期待する変化を感じにくい方が一定数いるということになります。エクオールをつくれるかどうかは、腸内に「エクオール産生菌」と呼ばれる特定の菌がいるかどうかに左右され、これまでに大腸を中心とした十数種類の菌が報告されています。さらに、一度つくれていた方でも、食生活の変化や加齢、抗生物質の使用などによって腸内環境が変わり、つくれなくなることもあります。
4「摂るだけ」で満足する前に、知っておきたいこと
大豆製品だけに頼る
効果に個人差
イソフラボンを摂取しても、エクオールに変換できなければ、期待する変化を実感しにくいことがあります
自分の体質を知る
対策を選べる
尿検査でエクオールをつくれているかどうかを確認できる方法があり、結果に応じて食事の工夫やほかの選択肢を検討しやすくなります
なお、エクオール産生能を調べる尿検査は、現在のところ保険診療の対象外で、自費検査となります。検査を希望される場合は、ご相談ください。
5研究で分かってきている、エクオールのはたらき
エクオールについては、更年期症状や骨密度、血管の健康などに関するさまざまな研究が行われています。ホットフラッシュ(多汗・のぼせ)や肩・首のこりを訴える方を対象とした研究では、エクオールを継続して摂取したグループで症状の改善を示す結果が報告されています。
ホットフラッシュの変化(12週間)
58.7%
減少という報告
肩・首のこりの変化(12週間)
34.5%
減少という報告
1年間の骨密度減少率
約半分
に抑えられたという報告
また、LDLコレステロールや、動脈硬化・糖尿病のリスクに関わる指標(HbA1c、CAVIなど)についても、良い方向への変化を示した試験結果が報告されています。ただし、これらはいずれもプラセボ(有効成分を含まないもの)と比較した研究結果であり、すべての方に同じように当てはまるとは限りません。エクオールは医薬品ではなく、疾病の治療や予防を目的とするものではない点にもご留意ください。
これまでの研究では、エクオールが更年期世代の女性の骨や血管の健康維持に役立つ可能性が報告されています。ただし、効果の感じ方には個人差があり、継続的な摂取とご自身の体質(腸内細菌の状態)の両方が関わっていることを知っておくと、過度な期待や思い込みを防ぐことができます。
持病で通院中の方、お薬を服用中の方、妊娠・授乳中の方は、サプリメントなどでエクオールを摂取する前に、必ず医師にご相談ください。乳がんなどホルモンに関連する治療を受けている方は、自己判断での摂取を避け、主治医にご確認いただくことを強くおすすめします。
6今月より、医療機関専用のエクオール製剤を導入しました
更年期世代の不調や、エクオールを十分につくれない方のサポートとして、当院では今月より、医療機関専用のエクオール製剤「エクオール プチ プラス」のお取り扱いを開始しました。一般の薬局やインターネット通販では購入できない、医療機関限定の製品です。
「エクオール プチ プラス」は、1日2粒を目安に、S-エクオール10mg、大豆イソフラボン(アグリコンとして)5mgのほか、ビタミンD3、亜鉛が摂れる栄養機能食品(亜鉛)です。60粒入り(1日2粒・30日分)で、小粒で飲みやすい形状になっています。
本品は食品であり、医薬品ではありません。多量に摂取しても病気が治ったり、より健康が増進するものではない点にご留意ください。大豆アレルギーのある方、妊娠・授乳中の方、乳幼児・小児、持病で通院中・お薬を服用中の方は、ご使用前に医師にご相談ください。
なお、本品は健康食品のため保険診療の対象外で、自費でのご購入となります。メーカー希望小売価格は60粒(30日分)で4,320円(税込)です。当院でのお求めについては、受付にてお気軽にお問い合わせください。
7よくあるご質問
大豆をたくさん食べれば、エクオールも増えますか?
大豆イソフラボンの摂取量を増やしても、腸内でエクオールに変換できるかどうかは体質によります。摂取量を増やすことよりも、ご自身がエクオールをつくれているかどうかを把握することのほうが大切と考えられます。
指のこわばりがあるだけでも、相談していいですか?
もちろんです。ホットフラッシュなどの典型的な症状がなくても、手指の不調が女性ホルモンの変化と関わっている場合があります。気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
エクオールを調べる検査は保険が使えますか?
エクオール産生能を調べる尿検査は、現在のところ保険診療の対象外で、自費検査となるのが一般的です。
「年のせい」と思っていた症状、まずはご相談ください
ホットフラッシュや肩こりだけでなく、手指の関節の腫れやこわばりも、女性ホルモンの減少のサインであることがあります。エクオールを十分につくれているかどうかは体質によって差があるため、食事だけでは対応が難しいと感じる方もいらっしゃいます。特に、指の第一関節の腫れや痛みが気になる方、チェックリストに複数当てはまる更年期世代の方は、お気軽にご相談ください。当院では、今月よりお取り扱いを開始した医療機関専用のエクオール製剤についてもご案内しております。
出典:麻生武志ほか, 日本女性医学学会雑誌 20(2), 313-332, 2012 / Oyama A et al., Menopause, 2012 / 内山成人, COSMETIC STAGE 10(1), 59-66, 2015 / Aso T et al., J Women's Health, 2012 / Tousen Y et al., Menopause, 2011 / Usui T et al., J Clin Endocrinol, 2012 / Iki M et al., Osteoporosis Int 15:981-991, 2004 / 日本女性医学学会編, 女性医学ガイドブック更年期医療編, 2019








