ドクターズノート

ピロリ菌を除菌しても、胃がんは起こる?胃カメラが必要な理由

胃カメラ・ピロリ菌

除菌はゴールではなくスタートラインです。リスクは下がっても、ゼロにはなりません。

ピロリ菌を除菌した。これで胃がんの心配はなくなった——そう思っていませんか?除菌で胃がんのリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。除菌後も、定期的な胃カメラ(胃内視鏡検査)をおすすめします。11月は胃がん啓発月間です。この機会に、除菌後の胃がんが起こる理由と、検査を受ける間隔の目安を整理しました。

1結論から:除菌はゴールではなくスタートラインです

ピロリ菌の除菌は、胃がんのリスクを下げる大切な一歩です。ただし、除菌後もリスクはゼロにならず、胃がんは起こりえます。ゴールではなく、これからも胃を見守っていくスタートラインと考えてください。症状がなくても、1〜2年に1回を目安に胃カメラを受けることをおすすめします。

2除菌しても胃がんが起こる理由

除菌後に胃がんが起こりうるのは、胃の粘膜についた“傷あと”が元に戻らないためです。本来の胃の粘膜は厚みがあり、胃酸から自分を守るしくみを備えています。ところが、長年ピロリ菌がいると、粘膜は炎症を繰り返して薄く弱くなっていきます。この状態を「萎縮(いしゅく)」といいます。

除菌をすると菌はいなくなり、炎症も落ち着きます。しかし、いったん傷んだ粘膜が、すべて元どおりになるとは限りません。床についた深い傷は、掃除をしても消えないことがあります。それと似たイメージです。

傷あとが残る粘膜では、除菌後もがんが発生する可能性が続くとされています。健診で「萎縮性胃炎」と言われた方は、この傷あとが残っている状態にあたります。「菌がいなくなったから終わり」とは言い切れない理由が、ここにあります。

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ピロリ菌除菌後の胃のイラスト。除菌によってピロリ菌が消え、胃粘膜の炎症は落ち着くものの、萎縮性胃炎による粘膜の変化が残る様子を断面図で解説。除菌後も胃がんのリスクはゼロにならないため、定期的な胃カメラ検査が大切であることを示している。

3数字で見る:リスクはどこまで下がるのか

除菌によって胃がんのリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。報告されている数字を、下にまとめました。

除菌した場合の胃がん発症リスク
約1/3〜1/2
に低下
除菌後に胃がんが見つかる割合
年0.2〜1.2%
報告により幅があります

除菌後の胃がんの割合は、報告により幅がありますが、年0.2〜0.5%程度(1,000人あたり年2〜5人)と報告されています。リスクも1/3〜1/2へ低下しますが、未感染の人と同程度まで下がるわけではありません。

数字だけを見ると、リスクが残ることに不安を覚えるかもしれません。けれども、それは「定期的に確認すれば、早く見つけられる可能性がある」ということでもあります。

ゼロではないことは気になる点ですが、除菌しなかった場合より下がっているのも事実です。だからこそ、定期的に確認して早く見つける体制を整えておくことが大切です。

4除菌後の胃がんは“見つかりにくい”

除菌後の胃がんは、見た目がおとなしく、見つかりにくい傾向があります。胃カメラで見たとき、次のような特徴を持つことがあります。

  1. 平らな形、またはごく浅いくぼみで、盛り上がりが目立たない
  2. 色は、やや赤みがある程度にとどまる
  3. 大きさが小さい
  4. 複数の場所にできることがある

胃カメラで見た胃がん病変の比較イラスト。左は盛り上がりが明瞭で見つけやすい病変、右はピロリ菌除菌後にみられる平坦で浅いくぼみ、わずかな赤み、小ささなどが特徴の見つけにくい病変を、胃粘膜の断面図とともに解説。

通常の白い光での観察では、周りの粘膜となじんで見え、目立たないことがあります。だからこそ、時間をかけた丁寧な観察が欠かせません。

また、除菌から10年以上たって見つかる病変が増えるとの報告があります。除菌後の胃がんのリスクは、長期にわたり続くとされています(日本胃癌学会 胃治療ガイドライン)。「除菌して何年も問題がなかった」ことは、検査をやめる理由にはなりません。

5除菌後の胃カメラは何年おきが目安?

目安は1〜2年に1回ですが、最適な間隔は人によって異なります。胃粘膜の萎縮の程度、年齢、これまでの病気の有無などで変わるため、一律には決められないのです。除菌した時期や、その後の検査の受け方によっても、次の検査の時期は変わります。

参考までに、国の胃がん検診は、50歳以上の方に2年に1回、胃部X線検査または胃内視鏡検査を行う仕組みです。除菌した方は、この検診の機会も生かしつつ、胃カメラの結果をもとに間隔をご相談いただくのが現実的です。

胃がんは、早い段階では症状が出にくい病気です。症状が出てから受診すると、見つかるのが遅れることがあります。だからこそ、症状のない時期の定期的な確認に意味があります。

「1〜2年に1回」は、あくまで一般的な目安です。前回の胃カメラで萎縮が強いと言われた方は、間隔を短めにするかどうか、一度ご相談ください。

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6除菌後も特に注意したい人

次に当てはまる方は、除菌後も特に定期的な検査をおすすめします。

  • 喫煙や飲酒の習慣がある方
  • 男性、または高齢の方
  • 胃の萎縮が強いと言われたことがある方
  • 早期胃がんの治療を受けたことがある方
  • ご家族に胃がんの方がいる方

これらは、胃がんのリスクが高めとされる条件です。特に、早期胃がんの治療を受けたことがある方は、別の場所に新たな胃がんができる可能性が長く続きます。定期的な経過観察が大切とされています。

喫煙や飲酒は、ご自身で見直せる点でもあります。検査とあわせて、生活習慣の見直しもご検討ください。ご家族のピロリ菌が気になる方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。

ピロリ菌は家族にうつる?同居家族の受診目安と子どもへの感染予防

7当院でできること/受診の目安

症状がなくても、除菌後の胃カメラは受けておく意義があります。当院では、鎮静剤を用いた苦痛の少ない胃カメラに対応しています。眠ったような状態で受けられるため、「つらそうで足が遠のいていた」という方もご相談ください。

精密検査や治療が必要な場合は、地域の中核病院と連携して進めます。次のような方は、受診をご検討ください。

  • 除菌後、1〜2年以上胃カメラを受けていない
  • 健診で「萎縮性胃炎」と言われたまま、数年が過ぎている
  • 除菌をしたものの、除菌できたかの判定をまだ受けていない

除菌の判定は、除菌終了後2ヶ月以降に、尿素呼気試験または便中抗原検査で行います。胃酸を抑える薬(PPI)を飲んでいる方は、結果に影響することがあるため、受診時にお知らせください。

みぞおちの痛み、胃もたれ、食欲の低下、体重の減少、黒い便などがある場合は、除菌歴にかかわらず早めの受診をご検討ください。

除菌後の胃カメラ、一度ご相談ください

除菌でリスクは下がりますが、ゼロにはなりません。1〜2年に1回を目安に、胃の状態を確認することをおすすめします。特に、除菌から数年以上たって一度も胃カメラを受けていない方、健診で萎縮性胃炎と言われた方、50歳以上の方、ご家族に胃がんの方がいる方は、お気軽にご相談ください。那珂川市・春日市周辺の方も通いやすい立地です。

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監修

嬉野 浩樹 消化器外科・消化器内科

久留米大学 卒

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本肝臓学会 肝臓専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医

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出典:Fukase K, et al. Lancet. 2008 / 日本胃癌学会 胃治療ガイドライン / 国立がん研究センター 除菌後の胃がんリスク研究(2025年) / 国立がん研究センター 最新がん統計 / 厚生労働省 がん検診

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