ドクターズノート

インフルエンザの季節に備える 〜ビタミンDと「感染予防」のヒミツ〜

ビタミンD・感染予防
インフルエンザワクチン接種前に知っておきたい、ビタミンDと免疫の意外な関係
10月1日からインフルエンザワクチンの接種が始まります。
ワクチンは感染症予防の「本丸」ですが、近年は「血中のビタミンDが十分な量ある人は、呼吸器の感染症にかかりにくい」ことを示す研究が国内外から報告されています。

 

そこで今回は、前回の記事「意外と知らないビタミンDのヒミツ」で触れた「免疫力アップ」の部分をもう少し深掘りして

 

①ビタミンDと感染予防の最新のエビデンス
②骨粗鬆症の治療で「活性型ビタミンD」を内服されている方にとってとても大切な注意点

 

をお話しします。

1ビタミンDは「骨」だけでなく、体を守る力にも関わっています

ビタミンDは、骨づくりだけでなく、のどや気管などの「呼吸器の守り」にも関わっていると考えられています。

食事や日光、サプリメントから入ったビタミンDは、肝臓で「25(OH)D(にじゅうご・ぴーえいち・でぃー)」という形に変わり、血液の中に蓄えられます。健診や血液検査で「ビタミンDの量」として測るのが、この値です。いわば体の「ビタミンDの貯金」です。

気道を守る免疫細胞は、この血液中の貯金を取り込み、自分の中で「活性型」に作り変えて使っています。すると、細菌やウイルスと戦う天然の抗菌物質が増え、のどや気管の粘膜を守る力が高まるとされています。

つまり、免疫の現場で大切なのは、原料となる「貯金」が血液中に十分あるかどうかです。

2研究では「効果は控えめ。ただし不足している人ほど期待できる」とされています

ビタミンDの感染予防効果は「劇的な特効薬」ではありませんが、続ける意味はあるという報告が複数あります。

日本の小学生の研究(2010年)
インフルエンザA型の発症率
10.8%(ビタミンD群)
偽薬群は18.6%でした
世界の研究をまとめた解析(2017年)
毎日・毎週続けた場合の風邪などの減少
約19%減
不足している人で特に大きい傾向
最新のまとめ解析(2025年)
毎日続けた場合の発症の減少
約16%減
全体では「有意」とは言い切れない結果

日本の小学生430人を対象にした研究(浦島ら、2010年)では、冬のあいだビタミンDを毎日飲んだグループで、インフルエンザA型にかかった割合が少なかったと報告されています。

世界の研究をまとめた解析(2017年)でも、毎日または毎週こつこつ続ける飲み方で、風邪や気管支炎などの呼吸器の感染症が減ったと報告されました。特に、もともとビタミンDが不足している人で効果が大きい傾向がありました。

一方、2025年に大規模な試験を加えて解析し直した結果、全体としては「統計的にはっきり有意」とまでは言えない数字になりました。効果がないと確定したわけではなく、効果の大きさは従来と同程度でしたが、誤差の範囲に入った、というのが正直なところです。

ここまでのまとめ

  • 効果は大きくありませんが、不足している人ほど効果が出やすいと考えられています。
  • 効果が示されているのは「毎日続ける」飲み方です。
  • ビタミンDはワクチンの代わりにはなりません。予防の柱はワクチン・手洗い・換気で、ビタミンDはそれを支える「土台」とお考えください。

3骨粗鬆症のお薬(活性型ビタミンD)だけでは、血液中の「貯金」は増えません

骨粗鬆症で処方される「アルファカルシドール」などの活性型ビタミンD製剤は、骨のためには役立つお薬ですが、血液中のビタミンDの貯金(25(OH)D)は増やしません。

このお薬は、体の中で最初から「活性型」に近い形で働くため、貯金の段階を通りません。そのため、毎日飲んでいても、血液中の25(OH)Dは上がらないのです。

活性型ビタミンD(骨のお薬)
貯金は増えない
骨には有用。免疫細胞が使う「原料」にはなりません。
天然型ビタミンD(食事・日光・サプリ)
貯金が増える
血液中の25(OH)Dが増え、免疫細胞の原料になります。

これは「活性型ビタミンDをやめたほうがいい」という話ではありません。骨に対する働きは別ものです。ただ、活性型のお薬を飲んでいて、血液中の25(OH)Dが低めの方は、天然型ビタミンDを併用することで、感染予防の面でも理にかなうと考えられます。

お薬を飲んでいる方へのお願い

  • 活性型のお薬を、自己判断で天然型のサプリに置き換えないでください(骨への作用が変わってしまいます)。
  • 天然型の併用はよく行われますが、血液中のカルシウムが高くなりすぎたり、尿路結石のリスクが上がったりすることがあります。始める前に、必ず主治医・薬剤師にご相談ください。
  • 血液中の25(OH)Dの測定は、保険が使える場合が限られており、原則として自費になります。当院でもご相談いただけます。

4今日からできるのは「ワクチン+ビタミンD」の3ステップです

感染予防の基本はワクチンで、ビタミンDはそれに上乗せする形で無理なく続けるのがおすすめです。

  1. インフルエンザワクチンを接種する:当院では10月1日から本格的に接種を開始します。
  2. 天然型ビタミンDを「毎日」続ける:1日800〜2,000IUが目安とされています。食後、脂質と一緒に摂ると吸収がよくなります。成人の摂取上限は1日100μg(4,000IU)とされていますので、摂りすぎにはご注意ください。
  3. 日光と食事も味方に:散歩のついでの日光浴と、魚・きのこ・卵黄を意識した食事も続けてみましょう。

インフルエンザワクチンについて詳しく見る

5ひとつでも当てはまれば、ビタミンDが不足しているかもしれません

次のチェックリストに当てはまる項目が多いほど、ビタミンDが不足しやすい生活といえます。

  • □ 活性型ビタミンD製剤(アルファカルシドールなど)を飲んでいるが、天然型ビタミンD(サプリ・食事)は摂っていない
  • □ 屋外で過ごす時間が短い
  • □ 魚料理は週2回以下
  • □ 最近、風邪をひきやすい

気になる方は、血液検査で血液中の25(OH)Dを確認してみませんか。ビタミンDの基礎や花粉症との関係は、過去のコラムでも紹介しています。

前回:ビタミンDの基礎と7大効果

花粉症とビタミンDの記事

冬を迎える前に、ワクチンとビタミンDの「準備」を

ビタミンDは「特効薬」ではありませんが、不足したまま冬を迎えないことは、感染症対策の土台になります。骨のお薬を飲んでいても、ビタミンDが足りているとは限りません。ワクチン接種とあわせて、ご自身の状態をチェックしてみてください。特に、骨粗鬆症で活性型ビタミンDのお薬を飲んでいる方、屋外で過ごす時間が短い方、風邪をひきやすい方、ご高齢の方は、お気軽にご相談ください。

インフルエンザワクチンのご案内

監修

嬉野 浩樹 消化器外科・消化器内科

久留米大学 卒

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 日本消化器外科学会 消化器外科専門医
  • 消化器がん外科治療認定医
  • 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本肝臓学会 肝臓専門医
  • 日本消化器病学会 消化器病専門医

院長の詳しいプロフィールを見る


参考文献:Urashima M, et al. Am J Clin Nutr. 2010;91(5):1255-60 / Martineau AR, et al. BMJ. 2017;356:i6583 / Jolliffe DA, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(4):307-20 / 東京慈恵会医科大学 プレスリリース 2025年3月4日 / 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団) / アルファカルシドール製剤 医薬品インタビューフォーム / 日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省

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